いつもはつぶやきまとめをする水曜日なんですが、まとめは明日にさせていただいて、このアルバムのことを書いておかねばと思ったのです。店で売ってないのに書き殴るシリーズ、ついに聴いたよ『八代亜紀/ 夜のアルバム』!

yashiro aki_yoru no album
【CD】八代亜紀/ 夜のアルバム (universal)
正直ここまで圧倒的な作品になっているとは想像できませんでした。由紀さおりのあの成功以降、ジャズ畑の方々が絡んだ同類の作品がたくさん制作されるだろうと思ったし、現にいろいろ作られてるわけですが、この『夜のアルバム』はそういった企画盤とは全く違う次元に存在してます。
懐メロ番組等で演歌を歌っている八代亜紀に実は感じていた声の衰え、これがまず全くみられない。生まれ変わった八代亜紀、販促キャッチフレーズでもなんでもなく声に新たな生気感じますもん。TV等で楽しそうにアルバムのことを話す亜紀ちゃんを見ましたが、ほんとに楽しめたんだなと。声の出方が今までとは違う。
次に選曲。「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「クライ・ミー・ア・リヴァー」「サマータイム」「枯葉」といったスタンダード・ソング、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」「再会」といった一度録音経験がある楽曲、そしてそして驚きの「ただそれだけのこと」…。ガチガチのジャズ作品を作るつもりならば選ばれなかったんじゃないかという曲が普通にスタンダード・ナンバーと並びたつ爽快さといったら!『夜のアルバム』は歌謡曲だ!!と叫びたい衝動に駆られました。

yashiro aki_yoru no album_2最後にこの作品を別次元にもっていっている最大の要因は間違いなく小西康陽氏のアレンジ・ワークなのだということ、このことが聴くとほんとに良くわかるのです。毎週末、音楽に敏感な若者や博識の音楽好きが集まるクラブという最前線でDJをされている小西さんの圧倒的現場感覚、古いものに新しいものを見つける‥現役レコード・リスナー&コレクターとしてのセンス(チエミの「テネシーワルツ」みたいに、2番から日本語歌詩に変わるとこ最高です!50〜60年代初期のカヴァーものマナー。)…こちらが新譜というものに求めていたそのものをブレることなくこうして形にされているのだから恐れ入ります。

yashiro aki_yoru no album_3ぶっちゃけると、ただムーディーな雰囲気のジャズ・アルバムだったら作れる人たくさんいらっしゃると思うのです。しかし、八代亜紀とクラブ・ミュージックを結びつけれる人ってそうはいませんよ。そう、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」も「私は泣いています」もこれはクラブ・ミュージックです。打ってなくてもね、人は踊るのだ。小西さんのDJ感覚を最も感じ取れたのは「五木の子守唄〜いそしぎ」。この2曲が魔法を使ったが如く美しく繋がってるんです。もうね、ため息しかでない。「ただそれだけのこと」、いくつかのヴァージョンがある知る人ぞ知る名曲ですが、個人的に最も好きなヴァージョンが透けて見えるのが嬉しくて嬉しくて!アルバム中最も歌謡歌手:八代亜紀の魅力を感じることが出来る作品。
長々と書きましたが予想を遥かに超えたアルバムだったので力入っちゃいました。ジャズ好きの人だけが買うの勿体ないなー。これは歌謡曲です。歌好き、音楽好きなら絶対に楽しめ、感動できる作品。最後に欲を言わせていただくなら、夜になるのを待って、ひとり部屋で針を落とす行為をしたくてしたくてたまらなくなりました!
ご購入はユニヴァーサルのオフィシャルHP他から。



何も紹介しないのもあれなので新着盤から一枚だけ載せておきます。

okumura chiyo_watashi
【7"】奥村チヨ/ あなたがいなくても (toshiba)
コケティッシュ・チヨ!後のお色気路線が嘘のような可愛らしいジャケですな。これが彼女のデビュー曲になります('65年)。作詞:多木比佐夫、作・編曲:津野陽二。清純派歌謡ポップス、明らかに弘田三枝子からの影響を感じさせる歌唱も逆に新鮮に聴こえます。B面「私を愛して」はシルヴィ・バルタンのカヴァー。訳詞は漣健児。'65年のこの頃にはカヴァーポップス・ブームもすっかり下火になってる頃で、チヨちゃんのバルタン・カヴァーは世間にそう認知されることなく終わってしまいました。凄く良いんですけどね。。盤(赤盤)に薄いスレ、ジャケットにシミ少し。2980円