夜のハスキーが歌う70年代ジャズ歌謡の名盤がキマシタ!

泉谷しげるがプロデュース、全作詞・作曲・編曲を手がけたジャズ歌謡の名盤!松尾和子の75年発売アルバム「ラプソディー」が新着なのであります。

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【LP】松尾和子/ラプソディー (VICTOR)
全体に漂うノスタルジックなジャズやブルースの雰囲気。泉谷のバックでお馴染みのラスト・ショウ(松田幸一・村上律・徳武弘文・岡田徹・島村英治)や「国旗はためく下に」のイエロー(吉長信樹・垂水良道・中村純作・川崎雅文)らが実に素晴らしい演奏を聴かせます。クラブ歌手で鍛えられた松尾女史にとってもお手のものといったところでしょう。

北村英治のクラリネットにのせ戦後昭和の香りがするジャズ歌謡「夜明けのラプソディー」や軽やかなピアノにのせたリラクシンなヴォーカルが光る「コップいっぱいの話」、ギターにCharも参加の気ままなホンキートンク「放浪(さすらい)の子」なんかの余裕を覗かせるウィットに富んだ歌唱があったり。かと思えば訥々と零れるようなフォーク「人情夜曲」や、郷愁を誘う独唱の叙情歌「哀願情歌」(泉谷本人も76年のアルバム「家族」で歌ってます)といったペーソスと情感の溢れる歌唱もある。
特にピアノ一本と歌だけのイントロダクションが痺れる「夜のかげろう」は白眉と言うべきかも知れません。昔の男の訃報に触れた女の哀切と強がりを抑制されたヴォーカルがなお一層引き立てます。そして♪いつまでも若いままであなたを愛せたら♪と囁くように繰り返す「らせん階段」がアルバムの最後を優しく優しく締めると。吉長信樹の口笛がジンと胸に迫るのです。完璧。

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煙の立ち込めるクラブ、酒の匂い、アパートの褪せた畳、気取らないダイナー、少し離れた喧騒、男の後姿、夕暮れの川岸…一曲一曲に情景が浮かぶとても映像的な世界。改めて泉谷しげる、すげぇーな!と感慨しきりです。そして女・松尾和子、とんでもないな!と。これについては泉谷氏の寄稿が素敵なので少し抜粋してみます。

“松尾和子とのつきあいがはじまってから、いろんな女性と出会うことができた。それはなにも日ごとにいちいち出会ったということではなく、松尾和子ひとりに何人もの女性をみたのだよ。ステキであり、まぬけであり、乱暴でもあり、そして女らしくもあり…会うたびにいろんな顔をみせてくれる。”

更に“彼女のことばのはしはしが、とにかく唄になってしまうのだよ。”とも。その上で“オバはんこれからもムリしろよォ。”と結ぶ。これだけで松尾和子のイイ仕事っぷりが伝わるすごくいい文ですね。素晴らしき女、素晴らしき歌手、素晴らしき哉、松尾和子。
個人的には笠井紀美子「アンブレラ」(72年・かまやつひろしProd.)、雪村いづみ「スーパー・ジェネレイション」(74年・キャラメル・ママProd.)と並べ70年代ナイス・プロデュース名盤として数えたい作品だと思う今日この頃なのであります。
盤に少しスレ、ジャケにも軽いリングウェアあり。帯付 3800円